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【睡】
兄が眠っている。
いつもどおり、寝顔を極力晒さないように。彼の寝顔を最後に見たのはいつだったろうか。今も、端整な頬のあたりが見えるばかりだ。
寝顔を晒すのは頭領として恥べき行為とでも祖父に教えられたのであろうか。眠りについても気を緩められないとは、当主というものは厄介なものである。
自分を含めた面倒な弟たちと親戚、そして家臣を抱えて、兄は相当苦労しているだろう。
多少なりともそれを分けてもらいたい。
次男である自分はそう思うのだが、兄はそう考えてはいないらしい。何でも、ひとりで背負い込もうとする。
確かに、大将たる兄が本陣でどっしり構えてくれているからこそ、自分を始め、弟たちは思い切り合戦に打ち込むことが出来るのだ。
けれども、頼られたいと思うのは、自分の我儘なのだろうか。
「もう少し、俺の気持ちにも気づいて欲しいんだけどな」
二歳しか離れていないのだから、もう少し兄に頼られたい。
決して、その地位を揺るがすつもりはないから。
兄がいるから、この家はまとまっているのだから。
「もうちょっと、頼れよ」
小さく呟いて、眠っている兄にそっと夜着をかけた。
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